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88e05c11.jpg東都名所 歌川広重画(幽斉書)
大判 横型 錦絵 極印 版元 川口正蔵板
今月の絵「高輪之名月」 アダチ版画研究所復刻版

10枚揃いのうちこの「高輪之名月」が唯一秋の絵です。時期的に秋は過ぎていますが池上、羽田を載せましたので少しずれてきました。

最も春が6枚、夏が3枚、秋が1枚の10枚ですので来年も少しづつずれ込みます。「両国之宵月」と並ぶ秀作と言われています。
 
小林忠氏の解説によれば石垣と高札の芝高輪の大木戸が画面左下に画かれ、それを起点に海岸線を大きく湾曲させる思い切った構図法は銅版画や北斎の弟子北寿の風景画に学んだのだろうか、画面上半分に広くとられた空には、鮮やかな藍色が一文字に刷かれ、摺り残した紙の素地大きな秋月を輝かせている。月に雁は広重が特に好んだ主題のひとつで花鳥版画にいくつか秀作が残っている。
 
「こむな夜が又も有うか月に雁」の句賛が記されている。秋の夜景の美しい一瞬を演出したこの図にも、そのまま借りて当てはまる事が出来る、軽妙洒脱な句である。広重の詩心が素直に流露してさわやかに好ましい。と絶賛しています。
 
また、この復刻版をつくったアダチ版画研究所の評もこの画は出色の出来で北斎の風景画と違い穏やかで温かみがあり若き広重の意気込みがほとばしっている。と好評です。
 
7c79014b.jpg高輪は江戸をたって最初の宿場品川に近く海岸にそって休み茶屋などがあり見送る人も、行楽の人、旅人と往来の盛んなところでそろそろ夕餉に近くなりこの海と空の広重ブルーが秋の月と大きな雁にマッチしています。
 
現代では天王洲アイルの高層建物やてんぷら船の屋形船が舟だまりにあり船頭がこれからの客の準備をしている時刻ででしょうか。雁に月なんてあまり見ることもなく東京では味気ないからすになってしまいます。そんなロマンのないことを思ってはいけないのですが。
 
この成功で広重の名も売れ、東海道五十三次への下地が出来て行ったようです。

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