孤舟 渡辺淳一

サラリーマンの定年後の悲哀、寂寥感を描いた渡辺淳一「孤舟」を暇つぶしに読んだ。

団塊の世代として大手企業で役員まで務めた主人公が定年になり自分だけの時間を楽しむことも出来ず趣味もなく妻には煙たがれて朝から行くところもなく、プライドにより就職先もない。

体力や活力もあるのに何もすることがない、行く処がない。ただ大きな社会の海に孤独に漂っている団塊の世代を孤舟と付けたようです。

妻は友人と食事や買い物、習い事と忙しく、団塊世代は競争で生きてきてライバルはいても親友は少ない。妻とは全く対照的な生活にびっくり。会社人の時は妻から今日は早いのと聞かれていたのが今度は自分が妻に早く帰って来い。何処へ行く。今までとは逆転の生活になって行く。

夫が一日中家にいる事で妻が心身を病む「主人在宅ストレス症候群」になっていく。そして家庭が崩壊していく。男性も手帳が黒くなるほど忙しがっている人ほど健康。自由な時間を持っているのに身体にも負担がない人ほど病気になったり早く亡くなったりするようです。

 

健康、時間の上手な使い方、規則正しい生活という循環なんでしょうか。まだ、身につまされませんがそのうち主人公と同じになるんでしょうか。孤舟恐るべし。

そして男は何となく損だなぁと思ってしまう。